風のテラスがすき

てきとーにいきてみたいな。のんびりと。でも、そうもいかないか。

にがいビールの味は、身体に染み込む

「テレワークは9月30日までとする」と連絡が来た。暇な人はそれでいいよ。

 

今やるべきことは、大阪のおっちやんたちのピンチを救うこと。

 

企画書を持ってなれない大阪の街を歩き、おっちゃんの会社に行った。

 

「おー!まったぞ」

「お待たせいたしました」

 

と企画書を取り出して説明しようとしたら、

 

「まあ、茶でも飲んで」

熱いお茶が出てきた。

 

熱いお茶が美味い。

宇治茶ですか?」

「そうや。わしの好きなお茶や」

「一保堂のお茶?」

「なんでわかった?」

「茶道やっているので」

「は?裏?表?」

「表です。もともと裏だったのですが会社の茶道部江戸千家の先生なので、表になります」

「ほー!」

 

しばらくするとお抹茶が出てきた。

 

夏らしく水菓子とともに。

 

お茶をいただき、

「仕事のお話してもよろしいでしょうか?」

「えーよ」

 

企画書を配り、プロジェクターをお借りしてプレゼンした。

 

プレゼンの時に先方の女子社員が多数会議室にきて、見てくれた。

 

終わってから、しばらく沈黙があり

なんとなく嫌な風が流れた。

 

間髪入れずツッコミの質問ぜめがないのが不思議!

 

時計を見ると7分立っている。

気分は1時間だ。

 

みんな企画書を読みながら鉛筆を動かして、何かを書いている。

 

「あの!よろしいですか?」

若い女子社員から質問が出て、それから質問の嵐になった。

 

すべて、ホワイトボードを使い説明する。

 

プレゼン後に質問の回答に60分!

気合入れすぎて、とにかく説明して、

社長から一言!

 

結果は後ほど連絡する。

 

「はい、ありがとうございました」

 

と言って大阪の街を歩くことになった。

 

急に腹が減った。

 

朝から何も食べてなかった。

 

何食べようか?

 

油そばか!

目の前にある油そば屋さんに引き寄せられ、入り食べていると、隣の人の話し声が急に耳に入るようになった。

 

「聞いた?問屋街やばいで!集金せなあかんな」

「どこもあかん」

「日本もやばい」

「コロナだけでなく、雨でやられ、どーなる?」

「銀行はこんな時こそきばらなあかん」

 

やばいのだよね。

本当にやばいのだよね。

 

クライアントは自分の会社と思え!

 

最初の上司の訓示を思い出しながら、油そば食べた。

 

店を出ると雨が降り、地下鉄の駅に吸い込まれる。

 

大阪駅にむかう足は重く、心に雷が鳴り響き、敗北した予感が身体を硬直させている。

 

大阪駅たこ焼き屋さんに入り、ビールを飲む。

 

いつになく、にがい。

 

大阪のビールはこんなにも、人の心に染み込む味なのか?