ただの男ではなかった。
心理学を専攻してきたと言っていたが、人身掌握術はすごい。
どこの企業に行っても「辞めたの?なんで?困ったな」といく同音に言う。
引き継いだもののこれからが大変だ。
外回りしながらランチに入る。
そこで考えた?
どこに行ったのか?
なぜ辞めたのか?
彼ならなにをするか?
ライバル車に引き抜かれた?
いや、彼は行かないはず。
彼の資産はなんだろう?
クライアント?
違うな!
クライアント持って転職する人はいるけど、彼はそんなことをしない。
彼のクライアントリストを眺めながら考えた。
上場企業のほかに聞いたことのない会社がたくさんある。
しかも、なぜか渋谷に集中している。
ベンチャーだね!
もし、彼が自分のノウハウをいかし起業するならどーだろうね。
会社をでてひとり銀座のバーで考えた。
すると答えが出てきた。
ここにいる!
そう思い銀座線に乗り渋谷に向かう。
円山町の小料理屋!
カウンターで晩ご飯食べ始めたら見慣れた男が入ってきた。
「みっけ」
「あ、とうしてわかりました」
「夏ごろ行ってたよね。渋谷のベンチャーは金鉱脈だと」
「よく覚えてますね」
「なにしてるの?」
「いま、ちょっと準備してます」
「起業?」
「そうです」
「あのさ、やめるのもいいけど挨拶ぐらいしなさいよ」
「引き留め工作すごいんですよ。面倒なんで退職手続きを代行してもらいました?」
「は?代行?してくれるの?」
「いま、30社以上ありますよ」
「で、なにやるの?」
「それはいえません」
「なに?もったいぶるな」
この店は料理が上手い
毎日通いたいと言っていた。
女将さんに取材しようと思ってきた。
「さすがですね。ここを思いつくとは。この店の話をしたのは先輩だけですけど」
「引継ぎしなさいよ」
彼はクライアントを一社ごとに引き継ぎをする書類を作っていた。
メールにて全社分もらう。
こんなことしてたんだと言う
驚きの連続!
そして、これが金鉱脈になったのだ。
「渡さないつもりでした。あの会社には未練ないし、どーなってもいいかなと」
泡盛を飲み続けたら疲れてきた。
彼の新しいiPhone番号を手に入れた。
「あ、先輩!お願いがあって」
「なに?」
「来週月曜日に弁当作って配達してください」
「は?弁当?」
「そうです。先輩の料理食べたいから」
「どこに配達するの?」
「高田馬場にあるオフィスです」
「オフィスあるの?」
「狭いですけどね。そこで詳細な説明をします」
「わかった」
飲みすぎた夜!
帰る!
確かにそう思うよね。
稼いでいたのはあんただけど言っていいよね。