「独立起業は茨の道。生半可な気持ちでやるな」
開口一番の言葉だった。
「売り上げを確保すること。集金すること。納税すること。やることたくさんあるよ」
「会社を辞めてみて、サラーリーマンが気楽な商売で、いかに恵まれていて、保護されてるか?よくわかると思うよ」と言われて、大変なんだろうなと思った。
「独立するとね、寝ないで頑張ったことが、自分に返ってくる。やればやるほど稼げる」だとも言われ、なんとなく笑顔になる甘い私。
「二人三脚という言葉があるだろ。一人でなく仲間を見つけろ」
いろんな先輩に脅されたり、励まされたり。
もともと、定年までいる人は稀有な会社だからな。
さてら考えるかな?
独立起業する仲間?
淑子しかいないな。
そう思っていると、淑子から電話があった。
「赤羽行くから」
「駅の近くのイタリア料理屋さんの2階で待ち合わせ」
「私も辞める」
「え?なんで?」
「あんた一人でできないだろ」
「でも、私と畑違いだよね」
「だからいいのだよ」
「何するのか?」
「紙媒体からwebに変えるだけだよ」
「そんなにうまくいく?」
「うまく稼げるようにしよう」
この楽天的な性格の淑子と、先に計画を立てる何回も書き直しながら進む私とは大違い。
「辞表出してきたから?」
「うそーー!」
「退路をたたないと先に進まない」
友の後押しで、辞表の提出をしてきた。
退社に関しては、局長から慰留されたが、丁重に断った。
引継ぎに時間がかかるから、退社は10月31日になった。
あと1ヶ月だ。
さて、寝ないでやるか?
まずは、仕事の整理だな。